OSAKA-KANSAI JAPAN EXPO 2025

ソーシャルイノベーションについて考える 課題解決に新しい力ソーシャルイノベーションについて考える 課題解決に新しい力

2025年万博の大阪誘致に向けたフォーラム「#thinkexpo2025ソーシャルイノベーションを考える~社会問題を解決する新しい力とは~」が8月24日、大阪市北区のグランフロント大阪北館で開催された。SDGs(持続可能な開発目標)などとともに、万博で主要テーマとなるソーシャルイノベーションについて、具体的取り組みの紹介やパネルディスカッションが行われ、市民約100人がメモをとるなどして熱心に聞き入った。

キーノートスピーチ

日本財団ソーシャルイノベーション推進チーム
チームリーダー 花岡隼人氏
「社会課題解決に向けた官と民の役割の再定義」

鍵を握るコミュニケーション

ソーシャルイノベーションは、1がアイデアで、99が実行。99の実行をどれだけあきらめずに、地道にやっていけるかが重要だ。イノベーターと聞くと、すごい人を思い浮かべるかもしれないが、社会変革を推し進めていくには、チームの力、調整役が必ず必要になってくる。NPO、企業、行政、大学など様々な立場の人たちが集まり、大きなゴールを共有しながらも、各々の譲れない一線を確認し、一歩一歩のステップを丁寧に進めていく。官民がフラットな立場で、何よりコミュニケーションを大切にすることが成功の鍵を握る。

キーノートスピーチ

事例紹介

住宅付き就職支援で若者の自立後押し 住民にも活気

事例紹介では、大阪府四条畷市の府営住宅「清滝団地」の空き部屋を活用した若者向け就職支援プロジェクトを取り上げ、府や日本財団と企画したNPO法人HELLOlifeの塩山諒代表や同市の林有理副市長、花岡チームリーダーが意見を交わした。
ニートなど失業中の若者に就職サポートだけでなく、空き部屋を無償提供し、地域住民らとの交流を通して自立を後押しする同プロジェクト。雇用と住宅で行政の管轄が違い、部署を超えた交渉にハードルの高さを実感したという塩山代表は、「関係者で役割分担を決め、粘り強く交渉しながら一つひとつ課題をクリアし、3年がかりで形にしていった。今では全国から視察が相次ぐほど注目されている。他の自治体にも適用できるようなビジネスモデルを築いていきたい」と力を込めた。一方、老朽化や駅の遠さから空室が目立ち、高齢化率5割を超えていた清滝団地について、林副市長は「若者が入居し、お祭りなどの地域の参加してくれることで、高齢の住民らの活気にもつながったと聞いている。こういう形がもっと広がってほしい」と地域活性化に期待をにじませた。
花岡チームリーダーは、ソーシャルイノベーションが活発な関西の現状に触れ、「既成概念を超えようとする時、踏み込んだやり取りが非常に重要。ボケとツッコミの文化が根付く関西では、コミュニケーションを大切にする素地があり、質の高いソーシャルイノベーションが生み出されている」と話していた。

事例紹介

パネルディスカッション

「関西からソーシャルイノベーションを生み出すには」をテーマに行われたパネルディスカッションでは、経済産業省商務流通保安グループ博覧会推進室の東哲也・博覧会国際企画調整官、一般社団法人リベルタ学舎の湯川カナ代表、NPO法人Ubdobeの加藤さくら・デジリハ広報・新規開拓担当、株式会社ロックオンの岩田進・代表取締役社長が議論した。ファシリテーターはタレントのU.K.さんが務めた。

パネルディスカッション

――ソーシャルイノベーションの課題や解決法とは

まずは発信 広がる共感の声

加藤リハビリが必要な子どもたちが意欲的に取り組めるよう、デジタルアートを取り入れたリハビリ「デジリハ」を展開している。キッズプログラマーが開発に加わることで、教育で分断されている病児、障がい児らとのタッチポイントにもなる。もともと小児リハへの認知度が低く、当事者が声をあげないと表に出ない課題がたくさんあった。資金集めの一環でクラウドファンディングをしたところ、当事者らから「こんなリハビリがあれば頑張れる」という意見がいろいろと寄せられて、どれぐらいのニーズがあるかも把握でき、形になっていった。企画をプレスリリースすると、病院からの問い合わせも相次いだ。タッチポイントについてはインクルーシブの必要性は感じるが、何をどうしたらよいか実行に移せていないという声が多く、共感してくれる人が多数いた。やはり、まずは発信をしていくことが大切だと感じた。

まずは発信 広がる共感の声

“俺”イノベーションから始まる社会変革

湯川持続可能な地域をつくる前に、持続可能な「俺」をつくる。つまり、“俺”イノベーション、“俺”サステナビリティー。まずは、個人が自分の課題を解決してみる。一人でできないなら、同じ課題を持っている人が集まって協働していこうよと。働きがい、女性の就業率、65歳以上の就業率。いずれも日本は世界で最低水準。だったら、やりがいのある仕事、続けられる働き方を自分たちで作り出そうと、「未来なりわいカンパニー」という取り組みを始めた。さらに、「1億総満足社会政策オーディション」では、参加者が実現したい政策を発表し、審査員の議員から札があがったら、議会に諮ってもらえる。すでに二つの政策が神戸市で予算化された。まずは、“俺”イノベーションをする。“俺”課題解決をする。その立ち上がった力でほかの人と協働していく。結果的にソーシャルイノベーションになっていく。そういう社会変革をしていきたい。

“俺”イノベーションから始まる社会変革

課題は人材 社員の満足、常に考える

岩田イノベーションは、理想と現実のギャップから生まれる。課題さえ発見すれば、後は解決法を考えて実行するのみ。「ロックオン」は関西で起業し、マザーズ上場を果たしたが、最初は一人での出発だった。優秀な人材をいかに採用できるかが最大の課題だった。社員が会社に魅力を感じてもらうにはどうしたらいいか。「インパクト・オン・ザ・ワールド(世界にインパクトを与えよう)」を会社の理念としているが、理念を体現できた社員には、きっちり報酬とは別に評価する。ほかには、部活動制度のように、木造2階建ての民家を借り上げ、常に誰かがたむろし、くつろげるようにしている。さらに、まとまった休みを確実にとってもらう「山篭り制度」。年度初めに休む期間を決めてもらい、取締役会の承認が必要なぐらい変更を難しくし、安心して海外旅行にも申し込んでもらう。2年間休んで、どこにでも行っていい「武者修行」という制度もある。いかに日々、満足して働いてもらえるかを常に考えている。

課題は人材 社員の満足、常に考える

万博活用 イノベーション交わる場所に

話を聞いていると、いくつか面白いキーワード、共感できるところがあった。2025年に誘致を目指している万博は、新しいものを実験する場、大きな器という表現をしたが、人が交わり、知恵が集まり、世界に発信できる場になる。みんながアイデアを持ち寄り、新しいことをできる万博。こういう課題があるということに対し、自分たちならこういう方法があるという意見を持ち寄る場にしたい。子どもの問題を掲げたら、世界的に先進的医療で解決しようとしているところもあれば、面白いプログラムで取り組んでいるところもある。ほかに、もっとクリエイティブな方法もあるかもしれない。課題に対してどんなイノベーションがあるかが交わる場所として、ぜひ多くの方々に活用してもらいたい。

万博活用 イノベーション交わる場所に

――関西からどんなイノベーションを生み出せると思うか

関西から発信 「#なんでやねん」

加藤関西で重度の障がい児を育てているお母さんと会ってきたが、関西は熱い人が多く、大阪でもデジリハを始められないか打ち合わせを重ねている。大阪弁の「なんでやねん」という言葉があるが、私自身も取り組みのきっかけは疑問を持つところから始まった。アイデアだが、「#(ハッシュタグ)なんでやねん」を集めたら、いろいろな課題がみえてくるはず。1000個ぐらい集まったら、一つのプロジェクトとして様々な役割の人が集まり、ソーシャルイノベーションにつながっていく気がする。

次代の人材 地域で育てる

湯川関西はいい意味で、田舎と都会の両方の良さを持ち合わせている。イノベーションに必要な、様々な価値観のステイクホルダーが集まっている。古い人もいるし、しがらみもある。しがらみはあるけど、動きもみえる街。顔と顔が見える関係だから、失礼なことができないし、裏切れない。時間をかけて信頼関係を築いていくことができる。地域の企業が次の人材を育てていく。コミュニティーをしっかりつくっていける。関西にはソーシャルイノベーションの可能性が広がっている。

世界に通用 関西のプロダクト

岩田関西から生み出せるものはものすごくある。もともと課題先進都市ということもあるが、海外にでていくと、日本としてどうなんだということが問われる。日本の文化が集積した都市でもあるので、ここでこそ世界に通用するプロダクトが生み出される。上場企業の社長も関西出身者が多い。東京の会社は多いが、もともとは関西からということがよくある。なんでやねんプロジェクトじゃないけど、そういう気質が関西人にはある。

悩みや課題 アイデア可視化

パビリオンを作る時、自分の悩みや課題、取り組みを投稿してもらって、世界中から反応があって、「いいね」がついて、アイデアが可視化されていったら面白い。いかに我が事としてひきつけてもらうか。いきなり地球環境問題を考えようと言われるよりは、我が家のごみ問題を考えようと呼びかけたほうがいい。延長線上にあるほうが、個人の行動を変えやすい。

関西からどんなイノベーションを生み出せると思うか

関西からどんなイノベーションを生み出せると思うか

――ソーシャルイノベーションの本質とは

1の思いに99の共感と実行

加藤個の幸せと、その背景、ストーリーを発信して、受け取った人が動いていく。イノベーションを起こすのに100必要だったら、1の思いに対し、99がどれだけ共感して実行するかが大事。眉間にしわを寄せているよりも、ワクワクして期待や可能性を語るほうが、人はついてくる。幼い子どもたちをみていると、期待しかなく、大人たちが勝手に悲壮感を漂わせているだけのように思う。子どもたちは幸せになるために、遊ぶために生まれてきたというパワーに溢れている。心が洗われ、大切なことに気付かされる。大人たちから「こんな未来になるよ」というワクワク感を発信することが何より重要だ。

個人の変化 社会のあり方自体変える

湯川これまでの社会システムでは幸せになれないから、新しくしようと考える。社会システムをゼロに戻すのではなく、軸を変えてしまう。社会の価値観、あり方自体を変えてしまう。「好きな仕事では食えない」と言われるが、食えないなら、食えるようにしようと「ベーシックインコメ」という取り組みを始めた。みんなで耕作放棄地を耕し、米を収穫して配布する。インターネットの時代は自律分散型。オープンで透明な場所に人は集まってくる。個人のリテラシーをあげる。私はこういうことをやりたい、こういう社会にしたいという個人の変化の総和が、結果としてソーシャルイノベーションにつながる。

多様なニーズに知恵絞る

岩田課題に尽きる。我々の会社は課題自体が明らかになっているので、後はいかに優秀な人材を集められるか。そのための議論が必要だし、これまでのような人材の集め方とはパラダイムが変わっている。人材の数が少ないので、いかに気持ちよく働いてもらえるか。それこそがイノベーション。お金もさることながら、大儀もそう、仲間もそう、オフィス環境もそう。リモートワークなどキーワードはあるが、多様なニーズにあわせて、いかに満足感をもって働いてもらえるかに知恵を絞っていきたい。

熱量高く 万博勝ち取る

新しいものを生み出すためには、熱量が高くないといけない。今日の話を聞いて、いくらでもコンテンツはあると思った。万博については、まずは11月に勝たないといけない。皆さんと一緒に勝ち取りたい。勝ち取った時には、こんなことを実現するんだというものをどんどん持ち込んできてほしい。